「つづく家」は、中古住宅を購入した新しい家族のために、基礎と屋根を残して解体し、耐震・断熱などの性能を高めながら、新たな暮らしに合わせてリノベーションと一部増築を行った住宅です。
この家で考えたのは、単に古い家を新しくすることではありません。
家は、家族が変わっても使い続けられるものなのか。
新しい家族の暮らしが始まり、その暮らしが年月を重ねていく。そしていつか、別の家族がこの家で暮らすことになるかもしれない。
暮らしが変われば、家の使い方も変わる。
だからこそ、最初から使い方を決めすぎないこと。
変化を受け入れられる余白をつくること。
そして、長く使い続けるための性能をきちんと整えておくこと。
「つづく家」は、暮らしとともに変わりながら、次の世代へ住み継がれていく家を考えたプロジェクトです。

設計コンセプト|家族と暮らしの未来がつづく
「つづく家」という名前には、二つの意味を込めています。
ひとつは、ここから始まる新しい家族の暮らしが「つづく」こと。
もうひとつは、その家そのものが、家族から家族へと「住み継がれていく」こと。
住宅は、完成した瞬間が終わりではありません。
家族が増えたり、子どもが成長したり、働き方が変わったり。
暮らしは少しずつ変化していきます。
それならば、家もまた、暮らしの変化を受け止められるものであっていい。
この家では、かつての日本家屋に見られた「襖で空間を変える」という仕組みを取り入れました。
さらに、構造・断熱・気密・換気といった目に見えない部分も更新。
古い家をきれいにするだけではなく、これから先の暮らしを支えるための性能まで整えました。
変わらないためではなく、変わりながらつづいていく。
それが、この家で考えた住まいのあり方です。

空間構成|暮らしに合わせて、空間も変わる
この家の中心となるのは、和室・次の間・居間の3室。
それぞれの部屋を完全に独立させるのではなく、襖や障子によって、必要に応じてつなげたり、分けたりできるようにしています。
襖を閉じれば、それぞれが個室になる。
襖を開ければ、3室がひと続きの大きな空間になる。
一部だけを開ければ、家族が過ごしながら来客にも対応できる。
つまり、部屋の大きさや役割を固定していません。
家族で過ごす日もあれば、誰か一人で静かに過ごす日もある。
季節によって、家具の置き方や過ごす場所が変わることもある。
そのときどきの暮らしに合わせて、家の使い方を変えられる。
昔の日本家屋にあった知恵を、現代の暮らしの中にもう一度取り入れながら、「決めすぎない間取り」をつくりました。







素材のこだわり|触れるものが、時間をつくる
この家では、肌に触れる部分に自然素材を多く取り入れました。
素材を選ぶときに大切にしたのは、単に「自然素材だから」という理由だけではありません。
木は、樹種によって色も木目も、触れたときの感触も違います。
そして、時間が経てば色が変わり、傷がつき、少しずつ表情も変わっていく。
その変化も含めて、住まい手と一緒に家を育てていける素材だと考えました。
床|吉野杉の無垢材+畳
床には吉野杉の無垢材を使用しました。
柔らかく、足に触れたときに温かみを感じられる素材です。
畳と組み合わせることで、座る、寝転ぶ、歩くといった日常の行為を、素材の感触から支えています。
内壁|珪藻土クロス
内壁には珪藻土クロスを採用。
左官仕上げよりもコストを抑えながら、自然素材らしい落ち着いた表情をつくりました。
ウッドデッキ|桧
外部には桧のウッドデッキを設け、室内と外部をつなぐ場所としています。
階段手摺|栗
毎日手に触れる階段手摺には栗を使用。
八角形に加工することで、手のひらになじむ形をつくりました。
造作材|さまざまな樹種
造作には、タモ、ウォールナット、クリ、ケヤキ、シナ、ベイツガ、サクラなど、さまざまな樹種を使用しています。同じ「木」でも、色も木目も触感も違う。
それぞれの違いを楽しみながら、年月とともに変化していく住まいを考えました。



性能のこだわり|住み継ぐために、見えないところを整える
築年数の経った中古住宅はどうしても性能に不安がある。これから長く使い続けるのであれば、構造や断熱、気密、換気といった、普段は目に見えない部分も整えておく必要があります。そこでこの家では、基礎と屋根を残して解体したうえで、耐震・断熱・気密・換気の性能向上を行いました。
- 耐震性能:構造計算を行い、耐力壁の追加、必要な梁せいの確保、床部分の水平構面の確保などによって、構造性能を高めています。
- 断熱性能:断熱材を入れ替え、UA値0.49W/㎡Kまで断熱性能を向上させました。
- 耐久性能・気密性能:調湿可変シートと地盤防湿シートを採用し、気密性・耐久性にも配慮。C値1.0cm²/m²を確保しています。
- 換気性能:熱交換型第一種換気を採用。外気の温度変化による影響を抑えながら、安定した空気環境をつくります。
住み継ぐためには、見える部分だけでなく、見えない部分こそ大切だと考えました。

※リノベーション前の様子



残すものと、変えるものを見極めながら、これからの時間に必要な価値を重ねていく。
それが、この家で考えたリノベーションです。
新築にはない、これまでの時間を引き継ぎながら、新しい暮らしを始める。
そこに、既存住宅を住み継ぐことの面白さがあると考えています。
建築概要|用途・工法など
- 所在地:滋賀県大津市
- 建物用途:戸建住宅
- 構造規模:木造2階建
- 工事種別:リノベーション+増築
- 敷地面積:306.32㎡(92.66坪)
- 延床面積:119.86㎡(36.25坪)
- 1階:76.79㎡(うち駐輪場11.35㎡)
- 2階:43.07㎡ - 設計:山猫百貨店一級建築士事務所
- 施工:株式会社 夏見工務店
まとめ|「つづく家」をつくるということ
家を建てること、あるいは家を直すことは、今の暮らしだけを考えればいいのでしょうか。
子どもが成長したとき。
家族の暮らし方が変わったとき。
そして、いつか別の誰かがこの家で暮らすことになったとき。
そのときにも、この家が新しい暮らしを受け止められるとしたら。
家は、もっと長い時間を生きられるのかもしれません。
「つづく家」は、そんな問いから生まれました。
変わらない家ではなく、変わりながらつづいていく家。
暮らしとともに家が育ち、家族から次の家族へと受け渡されていく。
住み継ぐことそのものを、ひとつの価値として考えた住まいです。
戸建リノベーションや性能向上リノベ をご検討の方は、ぜひ お問い合わせフォーム からご相談ください。