設計事例(住宅(改装))

まんなかにほんだなのある家|木のマンションリノベーション

「中古マンションを購入して、自分たちらしい住まいにしたい。」
そんなご相談から始まった、マンションリノベーションです。
購入予定のマンションを一緒に内見するところから始まり、設計・施工・完成までお手伝いしました。
マンションには、戸建住宅とは違った魅力があります。
街の中に暮らせること。
駅や職場、学校へのアクセスがよいこと。
そして、構造躯体を活かしながら、既存の住まいを自分たちの暮らしに合わせてつくり変えられること。

今回の住まいで考えたのは、マンションの一室をただ新しくすることではありません。
この家族にとって、家の中心にあるものは何だろう。
その答えとして生まれたのが、住まいのまんなかに設けた家族のための本棚でした。


設計コンセプト|家の中心に本棚を。家族がつながる仕掛け

ここの家の中心にあるのは、大きな造作本棚です。
本を収納するためだけの家具ではありません。
家族それぞれが好きな本を持ち寄り、好きな場所で読む。
本棚のまわりに自然と人が集まり、それぞれが別々のことをしながら、同じ場所にいる。
そんな時間をつくるための「場所」として、本棚を考えました。
家族が同じことをする必要はありません。

本を読む人。
仕事をする人。
料理をする人。
窓の外を眺める人。

それぞれが違うことをしながら、なんとなくお互いの気配を感じられる。
ひとつの場所に集まるのではなく、ひとつの場所を中心に、それぞれの時間がつながっていく。
そんな住まいを目指しました。


空間構成|区切らず、つなげる。緩やかなワンルーム空間

この住まいでは、寝室と水廻りを除き、できるだけ空間を細かく区切らない計画としました。
マンションの構造躯体を活かしながら、スケルトンにして間取りを組み直すことで、住戸全体をワンルームのようにつなげています。ただ広いだけの空間をつくったわけではありません。
場所ごとに少しずつ役割を変えながら、視線や動線がゆるやかにつながるようにしています。
土間からキッチンへ。
キッチンから本棚へ。
本棚から窓辺へ。
空間を歩くことそのものが、暮らしの一部になるように考えました。

飛び木を渡って、カフェスペースへ

この家には、少し遊び心のある場所もあります。
床から一段ずつ離れるように設けた「飛び木」を渡っていくと、その先には小さなカフェスペースがあります。
家の中に、目的地までの小さな寄り道をつくる。
必要不可欠ではないけれど、毎日の暮らしを少し楽しくする。
そんな場所です。

窓辺に座る

10階にあるこの住まいでは、窓の外に広がる山の緑が、ちょうど目の高さに見えます。
そこで、窓際に腰掛けられる場所をつくりました。
外を見るための窓ではなく、外の景色と暮らしがつながる場所として窓辺を考えています。
マンションだからこそ得られる眺望を、住まいの一部として取り込みました。


素材|マンションの中に、木の暮らしをつくる

「本物の木に囲まれた暮らしがしたい。」
そんな住まい手の想いから、この家では無垢材や漆喰など、自然素材を中心に素材を選びました。
マンションだからといって、無機質な内装にする必要はありません。
床に触れたときの感触。
木の香り。
時間とともに変わっていく色。
そうした、数字では測りきれない心地よさを、住まいの中に取り入れました。

床|杉の無垢材

床には杉の無垢材を使用しています。
柔らかく、素足で歩いたときにやさしい足触りが特徴です。
冬に床へ座ったときにも、木の温かみを感じられるようにしました。

壁|漆喰ローラー仕上げ

内壁には漆喰のローラー仕上げを採用しました。
左官による漆喰とは異なる仕上げですが、素材の持つ柔らかな表情を室内に取り入れています。

柱梁型|杉板張り

マンションでは、構造上どうしても梁や柱型が室内に現れることがあります。
それを隠すのではなく、杉板を張ることで、空間の一部として積極的に見せました。
マンション特有の構造的な要素を、木の住まいの表情へと変えています。

キッチン|木とステンレス

キッチンはステンレスシンクをオーダーし、杉材の収納と組み合わせました。
無垢材の柔らかさと、ステンレスのシャープさ。
異なる素材を組み合わせることで、空間にほどよい緊張感をつくっています。


性能|マンションだからこそ、温熱環境を整える

この住まいでは、デザインや素材だけでなく、室内の温熱環境にも配慮しました。ご家族の中にアトピー性皮膚炎の方がいらっしゃったことから、特に冬の寒さや結露など、室内環境をできるだけ整えることを考えました。既存の断熱材や窓の状態を確認し、できる範囲で断熱性能を高めています。

断熱改修

既存の吹付ウレタン20mmに加えて、25mmの付加断熱を行いました。

内窓

既存のアルミ単板ガラスに、樹脂製Low-Eペアガラスの内窓を追加。
窓からの熱の出入りを抑え、室内の温熱環境を整えています。

配管・配線

スケルトン状態にしたタイミングで、配管・配線も更新。
給水にはヘッダー工法を採用し、将来の維持管理にも配慮しました。

マンションリノベーションでは、目に見える仕上げだけでなく、壁や床の中に隠れてしまう部分をどう更新するかも重要です。

これから長く暮らすために、見えるところと見えないところの両方を整えました。


建築概要|用途・工法など

  • 所在地:香川県高松市
  • 建物用途:集合住宅(リノベーション対象:1住戸)
  • 構造:鉄骨鉄筋コンクリート造
  • 工事種別:リノベーション
  • 住戸面積:97.22㎡(29.40坪)
  • 設計:山猫百貨店一級建築士事務所
  • 施工:有限会社田中建設

    ※リノベーション前の様子

マンションを、もっと自由に。

マンションだから、木の家にはできない。
マンションだから、間取りは決まっている。
そんな固定観念を少しずつほどいていくことから、この住まいの設計は始まりました。
マンションには、マンションだからこそ得られる立地や眺望があります。
そして、その器の中で暮らし方を考え直すことで、戸建住宅とはまた違った住まいをつくることができます。

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